化粧品比較

“CICA専用ブランド”は実は少ない──ラインとブランドは別物

ドラッグストアにも通販にも「CICA」「シカ」を冠したコスメが溢れています。ところが、少し調べてみると意外な事実に行き当たります──“CICAを名乗る製品”は無数にあるのに、“ツボクサをブランドの中心に据えた専用ブランド”は、実はごくわずか。この記事は、その理由を「ブランド」と「ライン」の違いから解きほぐします。

まず用語:「CICA」「シカ」「ツボクサ」は同じもの

本題の前に、呼び名を整理します。CICA(シカ)ツボクサCentella asiatica(センテラ・アシアティカ)ゴツコラ(gotu kola)タイガーグラスは、すべて同じ一つの植物を指す呼び名です。 国や業界で言い方が違うだけで、中身は変わりません。呼称の全体像は ツボクサの呼び名辞典で詳しく整理しています。

この記事での言葉づかい

以下では、化粧品の文脈で最も通りの良い「CICA」と、植物名の「ツボクサ(Centella)」を、 文脈に応じて使い分けます。どちらも同じ植物のことです。

誤解の正体──「ブランド」と「ライン」は別物

「CICAブランドって、たくさんあるよね?」──これは、半分正しくて半分は誤解です。正確には、 「CICAという“製品ライン”を持つ総合ブランドが、たくさんある」が正しい言い方です。

たとえば有名な「Cicapair(シカペア)」「Cicaplast(シカプラスト)」「Cicabio(シカビオ)」。 これらは製品ライン(シリーズ)の名前であって、ブランド名ではありません。 それぞれの“親ブランド”は、CICA以外にもたくさんの製品を持つ総合スキンケアブランドです。

よく聞くCICAの名前 これは何? 親ブランド(その正体)
Cicapair(シカペア) 製品ライン名 Dr.Jart+(BBクリームや保湿ラインも持つ総合ブランド)[4]
Cicaplast(シカプラスト) 製品ライン名 La Roche-Posay(フランスの皮膚科系総合ブランド)
Cicabio(シカビオ) 製品ライン名 Bioderma(フランスの薬局系総合ブランド)
Centella Green Level 製品ライン名 PURITO(発酵化粧水なども持つ総合ブランド)[3]

つまり、棚に「CICA」の文字が溢れているのは事実でも、その多くは 「総合ブランドが、人気の成分としてCICAラインを1本足した」結果なのです。 “CICA製品の氾濫”と“CICA専用ブランドの氾濫”は、まったく別の話だということです。

本当のCICA専用ブランドは、片手で数えるほど

では、ブランドそのものがツボクサ(Centella)を中心に組み立てられた“専用ブランド”—— ブランド名・世界観・主力ラインの大半がCentella由来、というレベルのものは、どれくらいあるのでしょうか。 実在を確認できる範囲で探すと、驚くほど少数でした。代表格は次の3つです。

① Centellian24/Madeca(韓国)── 製薬由来の“純度の高い”専用ブランド

韓国のCentellian24(センテリアン24)は、主力ライン「Madeca(マデカ)」を核に、 ブランド全体がツボクサ由来成分で組み立てられています。母体は東国製薬(Dongkook Pharmaceutical)で、 ブランドの説明によれば、同社は長年ツボクサ抽出物を用いた製品づくりを手がけてきた実績を持ち、 そのツボクサ精製抽出物の技術を化粧品ブランドへ展開したもの、とされています[1]「ツボクサ一点特化」という点で、最も“専用ブランド”の定義にあてはまる例です。

② SKIN1004(韓国)── Centella起点の旗艦、ただし現在は拡張中

SKIN1004(スキン1004)は、マダガスカル産のCentella asiaticaを出発点とし、 看板製品「Madagascar Centella Asiatica 100 Ampoule(センテラ抽出物を主体にしたアンプル)」で広く知られます[2]。 ただし現在は保湿・トーンケアなど複数ラインへ広がっており、“純粋な専用”というより“Centellaを起点にした総合ブランド”に近づいています。 それでもブランドの顔がCentellaである点は変わらず、「準・専用ブランド」と位置づけるのが正確でしょう。

③ RIMAN/INCELLDERM(ICD)(韓国)── 品種から自社栽培まで“垂直統合”したツボクサ特化ブランド

韓国のRIMAN(リマン)が展開するスキンケアブランド INCELLDERM(インセルダム、通称ICD)は、 ツボクサ(Centella)をブランドの中核・代表原料(ヘリテージ原料)に据えたブランドです。 特筆すべきは、他ブランドが「原料を仕入れて配合する」のに対し、 RIMANがツボクサの“品種そのもの”から自社で開発・栽培している点にあります。

RIMAN/ICDの独自ツボクサ品種「ジャイアントビヨンプール(Giant Centella)」
RIMANの独自ツボクサ品種「ジャイアントビヨンプール(Giant Centella)」。一般のツボクサより葉・茎が大きいとされる。
  • 独自品種の開発──一般的なツボクサより葉・茎が2〜3倍大きいという独自品種 「ジャイアントビヨンプール(Giant Byoungpool/品種名 BT-Care)」を開発し、 韓国・山林庁に品種登録(2022年)済み[6]
  • 品種の権利保護──自社品種を遺伝子レベルで識別するSNPマーカーの韓国特許(登録第10-2965220号)に加え、 米国USDAの植物品種保護権(20年間の米国独占栽培権)を取得したと報じられています[7]
  • 自社栽培(垂直統合)──済州島にツボクサ栽培に特化したスマートファーム「リマンファーム」を構え、 原料のツボクサを自社栽培していると紹介されています[8]

「CICAラインを1本足した総合ブランド」とは、成り立ちがまるで違います。 品種開発 → 特許・品種保護 → 自社農場での栽培 → 製品化までを一気通貫でツボクサに賭けている点で、 ICDは“最もツボクサに専門特化したブランド”のひとつと言ってよい存在です (ブランド・製品の詳細はインセルダム(ICD)とは/ 看板のダーマトロジークリーム)。

※品種名・登録年・特許番号・農場などは企業活動の事実として複数の報道で確認したものです[6][7][8]。 一方、成分量や機能に関する数値はメーカー側の分析・説明にもとづくもので、肌への効果を保証するものではありません。

なぜ“専用”がこんなに少ないのか

ツボクサは、化粧品の世界で「肌をいたわるイメージの人気成分」として広まりました。 その結果、多くの総合ブランドが「売れ筋の成分」としてCICAラインを追加する方向に動きました。 逆に、ブランドの全存在をツボクサに賭けるのは、よほどの背景(製薬由来の技術や産地ストーリー)がないと難しい。 これが「CICA製品は無数なのに、CICA専用ブランドはごく少数」という非対称を生んでいます。

※なお、日本国内で「ツボクサ専用ブランド」と断言できる実在ブランドは、本稿の調査範囲では確認できませんでした。 国内で見かけるCICA製品の多くは、総合ブランドのラインか、輸入された韓国コスメが担っています(今後の動向は継続調査)。

「専用」と誤解されがちな総合ブランドのライン

ここまでを踏まえると、「CICAブランド」として名前が挙がりやすいブランドの多くは、実は総合ブランドのCICAラインだと分かります。 誤解しやすい代表例を整理しておきます(どれも良い製品ですが、“ブランドの正体”は総合型です)。

ブランド ブランドの正体 CICAの位置づけ
Dr.Jart+ 総合ダーマコスメ(BB・保湿・エイジングケア等) 「Cicapair」ライン
La Roche-Posay フランスの皮膚科系総合ブランド 「Cicaplast」ライン
Bioderma フランスの薬局系総合ブランド 「Cicabio」ライン
PURITO 総合K-beauty(発酵化粧水・スネイル等も) 「Centella Green Level」ライン
SOME BY MI 本体はAHA/BHA/PHA(角質・酸ケア)が主軸 独自成分を配合するが、ブランドの核は酸ケア
ドクターシーラボ 日本のオールインワン中心の総合ブランド ツボクサ配合ゲル等の1製品

※ブランドの性格・ライン構成は各公式サイトの表示にもとづく整理です[5]。優劣を付ける意図はありません。

「CICAを主役に据えた処方」という見方

“専用ブランドかどうか”とは別に、製品単位で見るときに役立つのが 「その処方が、ツボクサをどれだけ主役に据えているか」という視点です。 日本の全成分表示は、原則として配合量の多い順に並びます(1%以下は順不同)。 だから、ツボクサ由来成分が成分表の上位にあるほど、「ツボクサを土台に組み立てた処方」だと読み取れます。

この観点で見ると、専用寄りのブランドは処方でも一貫しています。たとえば6ブランドの成分比較では、 ICD(INCELLDERM)のクリームはツボクサ葉水が成分の筆頭Centellian24SKIN1004もツボクサ抽出物が筆頭に来ます。 一方、総合ブランドのCICAラインでは、ツボクサ成分が成分表の中〜下位にとどまることも珍しくありません。 ブランド名より成分表を見ると、その一本が“どれだけツボクサに寄せているか”が見えてきます。

成分そのものを知りたい方へ

ツボクサ成分が研究でどこまで分かっているかは ツボクサ成分の総まとめを、 成分が肌のどこまで届くのかは肌の浸透の図解もあわせてどうぞ。

では、無数のCICA製品はどう選ぶ?

「専用ブランドが少ない」と分かっても、選択肢が減るわけではありません。むしろ “ブランド名”ではなく“中身”で選ぶと、迷いが減ります。目安は次の3つです。

まとめ

  • 「Cicapair」「Cicaplast」「Cicabio」などは製品ライン名であってブランド名ではない
  • “CICA製品”は無数にあるが、ツボクサを核に据えた“専用ブランド”は片手で数えるほど(代表格はCentellian24・SKIN1004・RIMAN/ICD)。
  • とくにRIMAN/ICDは、独自品種の開発・品種保護(韓・米)・自社農場での栽培まで手がける“垂直統合型のツボクサ特化ブランド”で、CICAライン1本の総合ブランドとは成り立ちが違う。
  • だから「CICAブランドが山ほどある」は、正しくは「CICAラインを持つ総合ブランドが山ほどある」
  • 製品を選ぶときは、ブランド名より成分表・質感・目的。ツボクサが成分表の上位にあるほど「主役に据えた処方」と読める。

“CICA”という言葉の広がりと、その内実のギャップを知っておくと、コスメ選びの解像度がぐっと上がります。 次は代表ブランドの成分比較で、実際の処方の違いを見てみてください。

出典・参考文献

本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。

  1. Centellian24(センテリアン24)ブランドストーリー(東国製薬/Dongkook Pharmaceutical). マデカ(Madeca)ラインのブランド説明. https://centellian24.com/pages/brand
  2. SKIN1004 公式サイト. Madagascar Centella Asiatica ライン. https://www.skin1004.com/
  3. PURITO 公式サイト. Centella Green Level ライン(総合ブランドの一ライン). https://puritoen.com/
  4. Dr.Jart+ 「Cica Complex/Cicapair」製品情報(ラインの一つ). https://www.drjart.com/cica-complex
  5. 各ブランドの性格・ライン構成は、各公式サイトの表示にもとづく(2026年7月時点。ブランド展開は変動します)。
  6. リマンコリア/ICD 独自品種「ジャイアントビヨンプール(Giant Byoungpool/品種名BT-Care)」。韓国・山林庁への品種登録(2022年)に関する報道. https://www.cmn.co.kr/sub/news/news_view.asp?news_idx=47911
  7. エスクベース(リマン系列)「ジャイアントビヨンプール判別のためのSNPマーカー」韓国特許(登録第10-2965220号)/米国USDA植物品種保護権(20年)に関する報道. https://www.cmn.co.kr/sub/news/news_view.asp?news_idx=48110
  8. 「リマンファーム」(済州市・ツボクサ栽培特化スマートファーム。運営:エスクカンパニー)に関する報道・紹介. https://www.sisaenews.com/news/articleView.html?idxno=11484
  9. INCELLDERM(ICD)製品・独自原料情報(本サイト内 ICDセクション). /icd