ツボクサ(Centella Asiatica)成分の総まとめ
スキンケアでよく見る「CICA(シカ)」。その正体はツボクサ(Centella asiatica)という植物です。このページでは、ツボクサが“何でできていて(成分)、研究では何が示されているのか(作用)”を、原著論文や公的資料といった一次情報にもとづいて、できるだけ正確に・わかりやすく整理します。
そもそもツボクサ(CICA)とは
「CICA(シカ)」は、化粧品で使われる通称で、正体はツボクサ(学名 Centella asiatica)という セリ科の多年生ハーブです。アジアを中心に湿った土地に広がり、日本でも古くから野草として知られてきました。 「ゴツコラ(Gotu kola)」「センテラ」「積雪草(せきせつそう)」など、地域によってさまざまな呼び名があります。
呼び名はどれも同じ植物
「CICA」「シカ」「ツボクサ」「センテラ」「Centella asiatica」「ゴツコラ」は、いずれも同じ植物を指す言葉です。 表記が違うだけで、成分や働きの話は共通します。
ツボクサは、世界保健機関(WHO)が有用な薬用植物としてまとめたモノグラフにも収載されており、 伝統的なハーブとしての知名度は高い植物です[1]。 美容の分野で注目されるのは、後で見るトリテルペンという成分群を含み、 「肌をすこやかに保つ」文脈で数多くの研究が行われてきたためです。
主要成分──4つのトリテルペン
ツボクサの働きの中心になると考えられているのが、ペンタサイクリック・トリテルペノイド (5つの環をもつ植物由来成分)と呼ばれるグループです。とくに次の4つが代表格として知られています[5]。
| 成分名 | 英語表記 | ざっくりした立ち位置 |
|---|---|---|
| アシアチコシド | Asiaticoside | 配糖体(糖がついた形)。創傷治癒やコラーゲンの研究で言及が多い。 |
| マデカッソシド | Madecassoside | 配糖体。抗炎症・鎮静の文脈でよく取り上げられる。 |
| アシアチック酸 | Asiatic acid | アグリコン(糖が外れた酸の形)。上記の“もと”にあたる。 |
| マデカッシック酸 | Madecassic acid | アグリコン。抗炎症などで研究がある。 |
配糖体とアグリコン?
「配糖体」は成分に糖がくっついた形、「アグリコン」はその糖が外れた形、という関係です。 アシアチコシド(配糖体)とアシアチック酸(アグリコン)は、いわば“ペアの兄弟”のような関係にあります。
TECAとは(成分の“セット”の呼び名)
化粧品の成分表示や研究で TECA(Titrated Extract of Centella Asiatica)という言葉を見かけます。 これは上記のトリテルペン類を一定の割合になるように調整したツボクサ抽出物のことをまとめて指す呼び名です。 「TECA=特別な別成分」ではなく、あくまで主要成分をそろえた抽出物のことだと理解しておくと混乱しません。
成分の作用──研究でわかっていること
ここからは、ツボクサやそのトリテルペン成分について研究でわかっていることを紹介します。 各項目では、その知見がどのレベルの研究(試験管=in vitro/動物/ヒト試験)で得られたものかを添えます。 研究の“段階”まで見えるようにすることが、正確さであり、このサイトの信頼性の土台だと考えています。
① コラーゲンとハリ
ツボクサが美容で語られるとき、もっともよく登場するキーワードがコラーゲンです。 古くは1994年の研究で、アシアチック酸・マデカッシック酸・アシアチコシドが、 ヒト皮膚の細胞においてI型コラーゲンの産生を高めたことが報告されています[4]。 I型コラーゲンは皮膚のハリを支える主要なタンパク質で、この“土台づくり”に関わる可能性が、 ツボクサへの関心が続く理由のひとつです。
近年の総説でも、ツボクサとそのトリテルペン成分は、 肌の修復や結合組織の形成に関わるプロセスとの関連で検討されていると整理されています[5]。
② メラニンと透明感
ツボクサは、色素(メラニン)の文脈でも研究があります。 細胞を用いた研究では、成分のひとつアシアチコシドが メラニン生成(メラノジェネシス)に関わる経路にはたらき、 その産生を抑えたと報告した例があります[6]。
研究の「段階」を正しく読む
この結果は培養細胞(in vitro)での知見です。ヒトの肌でどの程度はたらくかは、試験の設計や濃度によって変わります。 「メラニン生成の経路に作用しうる、有望な研究段階」として押さえておくのが正確です。
③ 抗炎症・鎮静
「CICA=鎮静」というイメージの背景には、抗炎症に関する研究の蓄積があります。 ツボクサ抽出物には、抗アレルギー・抗そう痒(かゆみ)・抗炎症の作用を検討した研究があり[8]、 アトピー性皮膚炎のモデル(細胞・マウス)を用いた研究では、 炎症に関わる指標を抑えたことが報告されています[9]。 これらは、敏感に傾いた肌をいたわる文脈でツボクサが語られる理由の一端です。
④ バリア機能・保湿
ツボクサは、肌のバリア機能(うるおいを保ち、外部刺激から守る角層の働き)との関わりでも検討されています。 総説では、トリテルペン成分が皮膚の保湿やバリアに関わるプロセスと関連づけて論じられており[5]、 傷あと(瘢痕)に対するツボクサクリームのヒト試験なども行われています[7]。
公的機関(WHO・EMA)の評価
ツボクサは、公的機関の資料でも取り上げられています。 WHOのモノグラフに収載されているほか[1]、 欧州医薬品庁(EMA)は、ツボクサ(herba)について評価報告書とハーブモノグラフを公表しています[2][3]。 こうした公的評価が存在することは、伝統的な利用実績と一定の科学的関心を裏づける材料といえます。
安全性について
ツボクサは伝統的に広く利用されてきたハーブですが、化粧品成分としての利用でも、 体質によっては刺激やかぶれ、アレルギーが生じる可能性はゼロではありません。 公的機関の評価資料でも、使用上の留意点が整理されています[2]。 初めて使う製品はパッチテストを行う、肌に異常を感じたら使用を中止する、 といった一般的な注意を守ることが大切です。
まとめ
- CICA=ツボクサ(Centella asiatica)。呼び名が違うだけで同じ植物です。
- 働きの中心は4つのトリテルペン(アシアチコシド/マデカッソシド/アシアチック酸/マデカッシック酸)。
- 研究では、コラーゲン・メラニン・抗炎症・バリア機能との関わりが報告・示唆されています(多くは in vitro/動物/小規模ヒト試験)。
- WHO・EMAといった公的機関の資料にも取り上げられています。
成分ごとのより詳しい解説は、今後「アシアチコシド」「マデカッソシド」などの個別ページで掘り下げていきます。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- World Health Organization. WHO Monographs on Selected Medicinal Plants, Volume 1. 1999(Herba Centellae, p.77). https://www.e-lactancia.org/media/papers/Fitoterapia-WHO-01.pdf
- European Medicines Agency (EMA). Assessment report on Centella asiatica (L.) Urb., herba. https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-report/assessment-report-centella-asiatica-l-urb-herba-revision-1_en.pdf
- European Medicines Agency (EMA). European Union herbal monograph on Centella asiatica (L.) Urb., herba. https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-monograph/european-union-herbal-monograph-centella-asiatica-l-urb-herba-revision-1_en.pdf
- Bonte F, Dumas M, Chaudagne C, Meybeck A. Influence of asiatic acid, madecassic acid, and asiaticoside on human collagen I synthesis. Planta Med. 1994;60(2):133-135. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8202564/
- Sun B, Wu L, Wu Y, et al. Therapeutic Potential of Centella asiatica and Its Triterpenes: A Review. Front Pharmacol. 2020;11:568032. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7498642/
- Kwon KJ, et al. Asiaticoside, a component of Centella asiatica, inhibits melanogenesis in B16F10 mouse melanoma. Mol Med Rep. 2014. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24756377/
- Jenwitheesuk K, Surakunprapha P, et al. A Prospective Randomized, Controlled, Double-Blind Trial of the Efficacy Using Centella Cream for Scar Improvement. Evid Based Complement Alternat Med. 2018;2018:9525624. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6166374/
- George M, Joseph L, Ramaswamy. Anti-Allergic, Anti-Pruritic, and Anti-Inflammatory Activities of Centella asiatica Extracts. Afr J Tradit Complement Altern Med. 2009. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2816466/
- Lee Y, Choi HK, et al. Inhibitory Effect of Centella asiatica Extract on DNCB-Induced Atopic Dermatitis in HaCaT Cells and BALB/c Mice. Nutrients. 2020;12(2):411. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7071208/