肌の3層構造と、成分は“どこまで”届くのか──浸透とDDSの基礎(図解)
「肌の奥まで浸透」とよく聞きますが、実際のところ成分は“どこまで”届くのでしょうか。ここでは肌の3層構造と浸透の仕組みを、スマホで動かせる図解で見ながら、特定の製品によらない一般的な科学として整理します。
【図解】肌の断面と成分の浸透
まずは下の図解を触ってみてください。タブを切り替え、層をタップすると、 肌の構造と「成分がどこで壁にぶつかるのか」が直感的にわかります。
肌の断面と、成分は“どこまで”届くのか
タップして動かせます・スマホ対応
※図は見やすさのため厚みを誇張しています
肌は大きく3つの層でできています
上のイラストの各層をタップすると、それぞれの役割がわかります。いちばん外側の角質層は、髪の毛よりずっと薄い約0.02mm。この薄い層が、うるおいを守り、外からの侵入を防ぐ“最前線”です。
角質層(かくしつそう)/ ≈0.02mm
肌のいちばん外側。死んだ細胞(角質)がレンガのように積み重なり、すき間を脂質(モルタル役)が埋めた“かべ”の構造です。うるおいを保ち、外部刺激から守るバリアの本体。多くの成分は、まずこの層に阻まれます。
表皮(ひょうひ)/ ≈0.1〜0.2mm
新しい細胞が生まれ、押し上げられて角質になり、やがてはがれ落ちるターンオーバーの舞台。いちばん下の基底層では、色のもとになるメラニンがつくられます。透明感・色ムラの話はこの層が中心です。
真皮(しんぴ)/ ≈1〜3mm
肌のハリ・弾力を支える土台。ハリのもとであるコラーゲンや、それをつくる線維芽細胞、血管などがある層です。ここまで届く必要がある“深い話”ほど、浸透のハードルは高くなります。
小さな分子は、レンガのすき間(脂質の通り道)を抜けて奥へ届きます。
「500ダルトンの壁」
皮膚科学では、肌から入りこめる成分の大きさに目安があります。分子量がおよそ500ダルトンを超えると、角質層を通りにくくなるという「500ダルトンルール」です[2]。だから、多くの大きな成分は肌の表面にとどまり、奥までは届きません。ここが“浸透”の最大の関門です。
バリアを越えて成分を届けるための一般的な工夫を、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム=届け方の技術)と呼びます。 ここでは特定の製品の話ではなく、考え方の型を3つ紹介します。
① 小さくする
成分そのものや粒子をより小さくして、すき間を通りやすくする考え方。大きさの壁への直球のアプローチです。
② 包んで運ぶ
成分を膜(カプセル)で包んで運ぶ考え方。リポソームなどが代表例で、成分を守りながら目的地へ近づけます。
③ 通り道を整える
角質層の環境を一時的にゆるめて成分が入りやすい状態にする考え方(うるおいを与える等)。バリアを壊すのではなく“整える”のがポイントです。
いずれも、「大きさの壁(500ダルトン)」をどう乗り越えるかという共通のテーマへの答えです。技術は違っても、目指すゴールは同じです。
層をタップすると、その深さで語られるテーマがわかります
成分は「届く深さ」で役割が変わる
浅い層は保湿・キメ、少し奥の表皮は透明感・色ムラ、いちばん深い真皮はハリ・弾力——というように、届く深さごとにテーマが変わります。各層をタップしてみてください。
角質層で語られること
保湿・バリア・キメ・ごわつき。もっとも手前で、多くのスキンケアが実際に働く層です。うるおいを与えて整えるアプローチが中心になります。
表皮で語られること
メラニン・透明感・色ムラ・ターンオーバー。色のもとがつくられる層。「くすみ・透明感」の話題はここが舞台です。ツボクサ成分とメラニンの研究は成分の総まとめで解説しています。
真皮で語られること
コラーゲン・線維芽細胞・ハリ・弾力。肌の土台。ここに関わる話ほど“深い”テーマで、届けるハードルも上がります。ツボクサとコラーゲンの研究は成分の総まとめへ。
なぜ「浸透」はむずかしいのか
肌は外側から順に、角質層(約0.02mm)・表皮(約0.1〜0.2mm)・真皮(約1〜3mm)の3層でできています[1]。 このいちばん外側の角質層こそが、体を守るバリアの本体です。 角質層は、死んだ細胞(角質)がレンガのように積み重なり、そのすき間を脂質が埋めた“かべ”のような構造をしています。 このかべがあるおかげで、私たちは乾燥や異物の侵入から守られていますが、 同時にこれが「成分が奥まで入りにくい」理由にもなっています。
「500ダルトンの壁」
では、どんな成分なら入りこめるのでしょうか。皮膚科学には有名な目安があります。 分子量がおよそ500ダルトンを超えると、角質層を通り抜けにくくなるという「500ダルトンルール」です[2]。
500ダルトンルールの根拠(要約)
この経験則は、①肌から入って反応を起こす物質(接触アレルゲン)はほぼ500ダルトン未満、 ②皮膚に塗って使う薬もほとんどが500ダルトン未満、③貼り薬(経皮吸収)で使われる薬もすべて500ダルトン未満、 という観察にもとづいています[2]。 つまり「大きい分子は、そもそも肌の中に入りにくい」のです。
DDS──届けるための工夫
この「大きさの壁」を乗り越えて成分を届けるための技術を、まとめて DDS(ドラッグ・デリバリー・システム=届け方の技術)と呼びます。 上の図解の「届ける工夫」タブで示したように、大きく分けて ①小さくする ②膜で包んで運ぶ(リポソーム等) ③通り道を整えるといった考え方があります。 いずれも技術は違いますが、目指すゴールは同じ「必要な場所に、必要な成分を届ける」ことです。
なお、これらはあくまで技術の一般的な考え方の説明です。 特定の製品がどこまで届くか・どんな効果があるかは、製品ごとに異なります。
まとめ
- 肌は角質層・表皮・真皮の3層。最外層の角質層(約0.02mm)が守りの主役。
- 角質層はレンガ状のバリア構造で、成分が奥へ入るのを防いでいる。
- 目安として約500ダルトンを超える大きな分子は入りにくい(500ダルトンルール)。
- この壁を越える工夫がDDS(小さくする/包む/通り道を整える)。
- 成分は届く深さで役割が変わる(浅い=保湿、表皮=透明感、真皮=ハリ)。
ツボクサ成分が、これらのどのテーマ(コラーゲン・メラニン・鎮静・バリア)に関わるのかは、 ツボクサ(Centella Asiatica)成分の総まとめで解説しています。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- Sandby-Møller J, Poulsen T, Wulf HC. Epidermal thickness at different body sites: relationship to age, gender, pigmentation, blood content, skin type and smoking habits. Acta Derm Venereol. 2003;83(6):410-413. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14690333/
- Bos JD, Meinardi MM. The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs. Exp Dermatol. 2000;9(3):165-169. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10839713/