「CICA」「シカ」「ツボクサ」「センテラ」──呼び名の違いを一気に整理
「CICA」「シカ」「ツボクサ」「センテラ」──化粧品売り場や記事でバラバラに見かけるこれらの言葉。実は、すべて“同じ一つの植物”を指しています。このページでは、なぜ呼び名がこんなに多いのか、それぞれどこから来たのかを、学名・分類までさかのぼって整理します。
結論:ぜんぶ同じ植物です
先に答えを言ってしまいます。次の言葉は、すべて同じ一つの植物を指しています。
これらは全部イコール
CICA = シカ = ツボクサ = センテラ = Centella asiatica(学名)= ゴツコラ(gotu kola)
植物としての正式な名前(学名)は Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)。 セリ科(Apiaceae)の多年生ハーブで、アジア・アフリカ・オーストラリアなどの熱帯・亜熱帯に広く分布します[1]。 呼び名が違うだけで、成分や働きの話はすべて共通です。「シカとツボクサって別物?」という心配は要りません。
なぜ呼び名がこんなに多いのか
理由はシンプルで、この植物が「世界中で、とても古くから使われてきた」からです。 名前は大きく3種類に分けて考えると、混乱しません。
| 種類 | 例 | 性格 |
|---|---|---|
| 学名(世界共通の正式名) | Centella asiatica | どこの国でも通じる、ただ一つの正式名称。 |
| 各国語の名前(通称) | ツボクサ/gotu kola/积雪草 ほか | その土地の言葉での呼び名。地域ごとに違う。 |
| 美容・商品まわりの呼び名 | CICA/シカ/tiger grass | 近年のスキンケア文脈で広まった通称。 |
日本での呼び名(ツボクサ・積雪草)
日本語の正式な和名はツボクサ(壺草)です。日本各地の湿った土地に自生する野草で、古くから知られてきました。 漢方など生薬の文脈では積雪草(せきせつそう)と呼ばれます。 また、インド伝統医学(アーユルヴェーダ)由来の呼び名ゴツコラ(gotu kola)も、健康食品などで日本に定着しています。
「CICA/シカ」はどこから来た?
近年のスキンケアで一気に広まった「CICA(シカ)」。これは韓国コスメ(K-ビューティ)を通じて広がった呼び名です。 (なお、韓国語ではツボクサそのものを「병풀(ビョンプル)」と呼びます。「CICA」は主に製品まわりで使われる通称です。) 語源には有力な説が2つあり、しばしば重ねて語られます。
- 植物名(Centella asiatica)の頭を取って「Ci-ca(シカ)」とする見方。
- フランス語などの「cicatrisation(傷の修復)」「cicatrice(傷あと)」に通じる、とする見方。
豆知識
どちらの説も「傷をいたわる植物」というイメージにつながっており、 「CICA=肌をいたわるケア」という現在の使われ方と、きれいに重なっています。
英語圏の呼び名(gotu kola・pennywort・tiger grass)
英語では複数の名前で呼ばれます[1]。
- gotu kola(ゴツコラ):もっとも広く使われる通称。もとはシンハラ語(スリランカ)由来とされます。
- Indian pennywort/Asiatic pennywort:丸いコインのような葉の形にちなむ名前(pennywort=“ペニー草”)。
- spadeleaf/coinwort:やはり葉の形(スペード/コイン)から。
- tiger grass/tiger herb(タイガーグラス):後述の“虎の伝説”に由来する、美容でも使われる通称。
“タイガーグラス”の由来
「傷ついた虎が、この草の上で転げ回って傷を癒した」という言い伝えが各地に残り、 そこから tiger grass(虎の草) と呼ばれるようになった、と紹介されることが多い植物です。 “強い回復力”のイメージが、名前そのものに込められています。
中国語の呼び名(积雪草・崩大碗・雷公根)
中国語では、地域によっていくつかの名前があります[2]。
- 积雪草(jīxuěcǎo/せきせつそう):もっとも標準的な名前。日本の生薬名「積雪草」と同じ字です。
- 崩大碗(bēngdàwǎn):広東など中国南部でよく使われる呼び名。
- 雷公根(léigōnggēn):これも南部で使われる通称。
まちがえやすい注意点
「连钱草(れんせんそう)」という似た名前がありますが、これはカキドオシという別の植物を指すことが多く、 ツボクサとは別物です。中国語名は取り違えが起きやすいので、上の3つを目安にしてください。
サンスクリット(Mandukaparniと“ブラーフミー問題”)
ツボクサは、インドのアーユルヴェーダで古くから使われてきました。サンスクリット語での正式な名前は マンドゥーカパルニー(Mandukaparni)です[3]。 「蛙(マンドゥーカ)の葉(パルニー)」という意味で、水辺に広がる葉の様子にちなむとされます。
要注意:「ブラーフミー(Brahmi)」はあいまいな名前
ツボクサは「ブラーフミー(Brahmi)」とも呼ばれることがあります。ところが「ブラーフミー」は、 ツボクサとは別の植物バコパ(Bacopa monnieri)を指すことも多い、有名なまぎらわしい名前です。 インドの公式な薬用植物集(Ayurvedic Formulary of India)では、ブラーフミー=バコパ、 マンドゥーカパルニー=ツボクサ、と区別されています[3]。 2つは別の植物なので、「ブラーフミー」という語を見たときは、どちらを指しているか確認するのが安全です。
世界の呼び名 早見表
最後に、主な地域の呼び名をまとめます。呼び名はどれも同じ Centella asiatica を指します[4]。
| 言語・地域 | 呼び名 |
|---|---|
| 学名(世界共通) | Centella asiatica |
| 日本 | ツボクサ/積雪草(生薬名) |
| 韓国 | 병풀(byeong-pul/ビョンプル) |
| 英語圏 | gotu kola/Indian pennywort/tiger grass |
| 中国 | 积雪草/崩大碗/雷公根 |
| インド(サンスクリット) | Mandukaparni(マンドゥーカパルニー) |
| タイ | บัวบก(bua bok/ブアボック) |
| ベトナム | rau má(ラウマー) |
| マレーシア・インドネシア | pegaga(ペガガ) |
| スリランカ(シンハラ) | gotu kola(ゴツコラ) |
| ミャンマー | myin-hkwa(ミンクワ) |
まとめ
- CICA・シカ・ツボクサ・センテラ・gotu kola は、すべて同じ植物(学名 Centella asiatica、セリ科)。
- 呼び名が多いのは、世界中で古くから使われてきたため。学名・各国語・美容通称の3種類で整理すると分かりやすい。
- 「CICA/シカ」はK-ビューティ由来の通称で、植物名と「傷の修復(cicatrisation)」の両方に通じる。
- 「タイガーグラス」は、虎が傷を癒したという言い伝えに由来する呼び名。
- 注意点:中国語の「连钱草」や、サンスクリットの「ブラーフミー」は別の植物を指すことがある。
植物としての成分や働きについては、ツボクサ(Centella Asiatica)成分の総まとめで詳しく解説しています。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- World Health Organization. WHO Monographs on Selected Medicinal Plants, Volume 1. 1999(Herba Centellae, p.77). https://www.e-lactancia.org/media/papers/Fitoterapia-WHO-01.pdf
- Flora of China. Centella asiatica (L.) Urban(中国名:积雪草/崩大碗/雷公根). eFloras.org. http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200015478
- Sharma R, et al. Evaluation of comparative free-radical quenching potential of Brahmi (Bacopa monnieri) and Mandookparni (Centella asiatica). Ayu. 2011;32(2):258-262. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3296351/
- Aung TN, et al. Morphological Description and Ethnobotanical Review of the Orphan Crop Myin-Hkwa (Centella asiatica L.) From Myanmar. Front Sustain Food Syst. 2021;5:680862. https://www.frontiersin.org/journals/sustainable-food-systems/articles/10.3389/fsufs.2021.680862/full