ツボ草は何種類ある?──Centella属・品種・ケモタイプ
「ツボクサって何種類あるの?」という素朴な疑問。答えは少しややこしく、“化粧品で使うのは1種だけ”なのに、“その仲間(属)には数十種もある”のです。種・属・品種・ケモタイプという言葉を交通整理しながら、ツボクサの家系図をやさしくたどってみましょう。
化粧品の「ツボクサ」は1種だけ
まず結論から。スキンケアで「CICA」「シカ」「センテラ」と呼ばれる植物は、 植物学的には Centella asiatica(ツボクサ)という1つの種を指します。 呼び名はたくさんあっても、指している植物は基本的にこの一種だけです (呼称の整理はツボクサの呼び名の違いをご覧ください)。 まずはこの「化粧品のツボクサ=1種」を押さえておけば十分です。
用語のかみ砕き
「種(しゅ)」は生き物を分類する基本単位、「属(ぞく)」は近い種をまとめた一つ上のグループです。 たとえば Centella asiatica なら、後半の asiatica が種、前半の Centella が属を表します。
Centella属は40種以上ある
ところが、その一つ上のCentella属(ツボクサ属)にまで視野を広げると話が変わります。 Centella属には40種以上(数え方には諸説あります)が知られ、 しかもその大半は南アフリカを中心とするアフリカ南部が原産だと考えられています。 つまり属全体で見れば「アフリカの植物グループ」なのです。
その中で Centella asiatica だけが例外的に、アジアを中心に世界の熱帯・亜熱帯へ広く分布しました[1]。 私たちがスキンケアで出会うのは、この“遠くまで旅をした一種”というわけです。 植物としての基本的な姿かたちはツボクサの植物学で詳しく解説しています。
同じ種でも中身が違う「ケモタイプ」
さらにややこしいのは、同じ Centella asiatica でも、育った場所や季節によって含まれる成分の量が変わる点です。 ツボクサの“主役成分”であるトリテルペン類(アジアチコシド、マデカッソシドなど)の量や比率は、 産地・気候・収穫時期によってかなりばらつくことが報告されています[1]。 このように、種としては同じでも化学的な中身のタイプが異なるものを「ケモタイプ(化学型)」と呼びます。
ポイント
「同じツボクサなら中身も同じ」とは限りません。だからこそ原料メーカーは産地や規格を管理します。 成分そのものの働きはCICA成分の総まとめで整理しています。
品種の例:ジャイアント・センテラ
人の手で選抜・栽培された「品種(栽培品種)」の違いもあります。 たとえば大型の ジャイアント・センテラ(Giant Centella asiatica)のように、 通常より大きく育つタイプが研究対象になることがあります。 ある研究では、このジャイアント・センテラの抽出物がメラニンを作る仕組みに関わる可能性を、 細胞・分子レベルで検討しています[2]。
別属Hydrocotyle(チドメグサ類)との混同
最後に注意点を一つ。ツボクサは丸い葉をもつため、 見た目のよく似たチドメグサ類(Hydrocotyle属)としばしば混同されます。 Hydrocotyle は名前も英名(pennywort)も紛らわしいのですが、 Centella属とは別の属で、含まれる成分も同じとは限りません。 野草を自分で採って使おうとする場合は特に、見た目が似ていても別物であることを意識してください (似た植物の見分け方はツボクサと似た植物の見分け方で詳しく扱います)。
まとめ
- 化粧品の「ツボクサ/CICA」は Centella asiatica という1種だけ。
- ただしCentella属には40種以上(諸説あり)があり、大半はアフリカ南部原産。C. asiatica だけが例外的にアジア中心に広く分布した。
- 同じ種でも産地・季節で成分量が変わるケモタイプや、ジャイアント・センテラのような品種の違いがある。
- 見た目の似た別属チドメグサ類(Hydrocotyle)との混同に注意。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- Sun B, Wu L, Wu Y, et al. Therapeutic Potential of Centella asiatica and Its Triterpenes: A Review. Front Pharmacol. 2020;11:568032. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7498642/
- Seo J, et al. Giant Centella asiatica suppresses α-melanocyte-stimulating hormone-induced melanogenesis through MC1R binding. Int J Mol Med. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11573313/