EMA(欧州医薬品庁)の評価報告を読む
WHOと並ぶもう一つの重要な公的資料が、欧州医薬品庁(EMA)によるツボクサの評価文書です。EMAは専門委員会が科学的・伝統的な使用実績を精査したうえで、報告書とモノグラフを公開しています。ここではその2つの文書が何を意味するのかを整理します。
EMAとは・2つの文書
EMA(European Medicines Agency=欧州医薬品庁)は、EU域内で医薬品の評価を担う公的機関です。 その中の植物薬委員会(HMPC)が、ツボクサ(Centella asiatica)について次の2種類の文書をまとめています。
- アセスメント報告(Assessment report):既存の研究や使用実績を精査した、根拠のまとめ[1]。
- EUハーブモノグラフ(herbal monograph):評価をふまえた、使用に関する公式なまとめ[2]。
2つの違い
アセスメント報告が「調べて検討した過程・根拠集」、モノグラフが「その結論としての公式見解」と考えるとわかりやすいです。
アセスメント報告に書かれていること
アセスメント報告では、ツボクサの成分、これまでに行われた研究(試験管・動物・ヒト)、そして安全性のデータが幅広く精査されています[1]。 皮膚の結合組織や創傷治癒、めぐり(静脈)に関わる研究など、伝統的に語られてきた用途が、 どの程度の質のデータで裏づけられているのかを、慎重な言葉づかいで整理しているのが特徴です。 成分そのものの解説はツボクサ成分の総まとめを参照してください。
EU ハーブモノグラフの位置づけ
モノグラフは、評価をふまえて「どのような使い方が妥当と考えられるか」を公式にまとめた文書です[2]。 EMAのモノグラフに収載されること自体が、植物としての素性と使用実績が公的に認められていることの一つの目安になります。 ここでの結論は、断定的な効能をうたうものではなく、あくまで妥当な範囲を示すという性格のものです。
「伝統的使用」という枠組み
EMAのハーブ評価には、「十分な使用実績(伝統的使用)にもとづく」という枠組みがあります。 これは、長年安全に使われてきた実績を根拠に位置づける考え方で、 大規模な臨床試験だけを唯一の根拠とするのとは異なります。 ツボクサはこの枠組みで扱われており、「長く使われてきた確かな植物」だが「万能薬」ではないという、 バランスのとれた評価になっている点が重要です。
この評価をどう読むか
EMAの文書は、ツボクサをめぐる情報を冷静に見きわめるうえで、とても頼りになる「ものさし」です。 広告的な誇張と、公的機関の慎重な結論との差を知っておくと、化粧品を選ぶときにも役立ちます。 より古典的なまとめであるWHOモノグラフや、 安全性データとあわせて読むと、全体像がつかみやすくなります。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- European Medicines Agency (EMA). Assessment report on Centella asiatica (L.) Urb., herba. EMA/HMPC/489142/2020. https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-report/assessment-report-centella-asiatica-l-urb-herba-revision-1_en.pdf
- European Medicines Agency (EMA). European Union herbal monograph on Centella asiatica (L.) Urb., herba. https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-monograph/european-union-herbal-monograph-centella-asiatica-l-urb-herba-revision-1_en.pdf