アーユルヴェーダのツボクサ(Mandukaparni)とブラーフミー問題
インドの伝統医学アーユルヴェーダは、ツボクサを何千年も前から重んじてきました。ただし、その名前をめぐっては昔から有名な“混乱”があります。「マンドゥーカパルニー」と「ブラーフミー」──この2つの名前のあいだで何が起きているのか、ていねいにほどいていきましょう。
アーユルヴェーダとラサーヤナ
アーユルヴェーダは、インドに伝わる伝統医学の体系です。そのなかで、心身を若々しく保ち、 活力を養うとされる薬・処方の一群をラサーヤナ(rasayana)と呼びます。 「若返り」「強壮」といったイメージでとらえられる分野で、ツボクサはこのラサーヤナの代表的なハーブの一つとされてきました[3]。 伝統利用の全体像はツボクサの歴史と伝統利用もご覧ください。
Mandukaparni(マンドゥーカパルニー)とは
アーユルヴェーダでツボクサを指すサンスクリット語の名前がマンドゥーカパルニー(Mandukaparni)です。 「蛙(マンドゥーカ)の葉(パルニー)」を意味し、水辺に葉を広げる姿にちなむとされます。 伝統的には、記憶や集中を助ける“頭のはたらき”に関わるハーブとして語られてきました (現代研究との関係は“脳のハーブ”としてのツボクサで解説)。
“ブラーフミー問題”──バコパとの混同
ここからが本題です。ツボクサは、しばしば「ブラーフミー(Brahmi)」とも呼ばれます。 ところが、この「ブラーフミー」という名前は別の植物バコパ(Bacopa monnieri)を指すことも多い、 伝統医学の世界で有名なまぎらわしい名前なのです[1]。
整理すると
・Mandukaparni(マンドゥーカパルニー) = ツボクサ(Centella asiatica)
・Brahmi(ブラーフミー) = 文脈により バコパ(Bacopa monnieri) を指すことが多い
「ブラーフミー」という語を見たら、どちらの植物を指しているか確認するのが安全です。
実際、ツボクサとバコパを比較した研究も行われており、両者は「ブラーフミー」の名で語られつつも 別の植物として扱われていることが分かります[1]。
なぜ混同が起きるのか
混同の背景にはいくつかの事情があります。ひとつは、どちらも伝統的に “頭・記憶を助けるハーブ”として似た役割で使われてきたこと。 もうひとつは、地域や時代によって同じ通称(ブラーフミー)が別の植物に当てられてきたことです。 そのため、インドの公式な処方集などではMandukaparni=ツボクサ、Brahmi=バコパと、 学名で区別する形で整理されています。呼び名の混乱全般については、 呼び名の違いを整理したページもあわせてどうぞ。
現代の研究とのつながり
ツボクサの伝統利用は、現代の公的評価にもつながっています。欧州医薬品庁(EMA)は、 ツボクサ(Centella asiatica herba)の伝統的な使用を評価報告書として整理しています[2]。 ただし、伝統的にラサーヤナとされてきたことと、現代医学で効果が証明されたこととは別問題です。 本サイトでは、伝承は伝承、研究は研究として分けて紹介する方針をとっています。
まとめ
- アーユルヴェーダでツボクサはMandukaparniと呼ばれ、若返り・強壮のラサーヤナに数えられた。
- 「ブラーフミー(Brahmi)」は別の植物バコパを指すことが多いまぎらわしい名前(=ブラーフミー問題)。
- 公式には Mandukaparni=ツボクサ/Brahmi=バコパ と区別される。名前を見たら植物を確認するのが安全。
出典・参考文献
本記事の記述は、以下の一次情報(原著論文・公的資料等)にもとづきます。
- Sharma R, et al. Evaluation of comparative free-radical quenching potential of Brahmi (Bacopa monnieri) and Mandookparni (Centella asiatica). Ayu. 2011;32(2):258-262. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3296351/
- European Medicines Agency (EMA). Assessment report on Centella asiatica (L.) Urb., herba. EMA/HMPC/489142/2020. https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-report/assessment-report-centella-asiatica-l-urb-herba-revision-1_en.pdf
- Orhan IE. Centella asiatica (L.) Urban: From Traditional Medicine to Modern Medicine with Neuroprotective Potential. Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:946259. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3359802/